著作権

実演家等の権利が拡張された著作権改正とは

6月17日に著作権法が改正され、実演家やレコード製作者の権利が拡張されました。ここでは、何がどのように変わったのかについて解説します。
例えば、会社のオフィス内の執務環境の改善の目的で、買ってきたCDの音楽をBGMとして流したとします。この場合、誰の著作権を侵害していると言えるでしょうか?
営利目的でない著作物の利用は著作権の侵害にはならない場合もあるのですが、このケースでは執務環境を改善して会社の利益に繋げたいという意図が感じられることから、営利目的に該当すると判断されます。そうなると買ってきたCDを自由に流しても良いかというと、残念ながらそういうわけにはいきません。
そしてこの場合、著作権の侵害に該当する権利者は誰になるのかというと、音楽の作曲者および歌であれば作詞者にも権利が及びます。
では演奏家についてはどうでしょうか?
例えば、オフィスに落ち着いた環境をもたらすためにモーツアルトのピアノ曲をBGMとして流した場合、モーツアルトの著作権は既に切れていますからそれは問題ないとして、演奏しているピアニストや、スタジオで録音したレコード会社などは、自由に利用されても何も言えないのでしょうか。
実は、今までの著作権法では、この例のような場合には、演奏家もレコード製作者もその利用に対して何がしかを主張できる権利がありませんでした。
作詞作曲されたものを音楽家が音にして表現した演奏に対しては、著作隣接権という、著作権ではないけれど一定の権利が認められています。その演奏を録音したものを製作したレコード製作者にも同じように著作隣接権という権利が認められています。この著作隣接権には、勝手に再生されることについての制限がなかったわけではないのですが、その制限の対象は放送の場合に限定されていました。
つまりテレビやラジオのような放送や、USENのような有線放送といった、同時多数に配信されるサービスのような場合にのみ対象とされていたのです。
演奏家にしてみれば、例えば自分の歌声がスーパマーケットの店舗で流されているとき、それが店の売り上げにつながっていたとしても自分には何の見返りもないのは、癪だと思っても仕方のないことでしょう。
また、ネットで自由に聞けるような状態になっていたとしたら、自身のCDや録音データの売り上げにも影響してしまいます。
ちなみに、演奏データを勝手にネットでアクセスできるようにする行為は、送信可能化権の侵害に該当しますし、それをコンピュータ等で再生する行為もまた、権利侵害に該当する行為になります。データをダウンロードして再生する場合、データは一旦キャッシュメモリなどに保存された上で音に変換されることになり、その保存行為が無断複製に該当するという、これまでの著作権法では少々こじつけに似た論法が取られたりしているのですね。
話を戻すと、BGM等で再生する行為について、海外では演奏家やレコード製造者が権利を主張できたり、利用料の請求を行うことができるような法整備がされています。今回我が国の著作権法でも、海外の法整備に合わせて利用料の請求をすることができるようにしようという、そのような法改正がされたわけです。
改正法がいつから施行され有効になるのかについては政令で決めるとされており、この文章を書いている時点ではまだわかりませんが、実際に施行された場合には、いくつか大きな影響があるものと考えます。
例えば、かかってきた電話の保留音にCDの音楽を流している場合、今後はそのCDの演奏家やCDの制作者に対して利用料の支払いが必要になる場合があります。
店舗の軒先で、CDプレーヤで音楽を鳴らして景気付けをしてきたようなケースでも、今までは何も言われなかったのが、法律が施行されてからは、同じように利用料を請求される可能性が出てきます。
皆さんのところで、こうした利用がされていないかどうか、改めて確認してみましょう。
ところで、話をオフィスのBGMに戻しますが、今回の法改正がなかったとしても、音楽を勝手に流す行為は作曲家や作詞家の著作権を侵害する行為になるとお話ししました。でも、誰からも文句を言われず、利用料の請求もされないのはなぜでしょうか。
楽曲の作詞作曲家等の著作権については、全部ではありませんが、日本音楽著作権協会、通称JASRACが管理しており、著作権侵害に対する措置や利用料の徴収はこの団体が一括して請け負っています。
そのJASRACが、オフィスのBGMでの使用について、流す対象が従業員のみの場合には権利主張はせず、利用料の徴収も当面は行わないという方針を公表しており、そのため誰からも何も言われないのです。「当面は」ですから将来はどうなるかわかりませんが、現状はそのようになっています。
また、上記の通り、JASRACが保護しているのは作詞作曲家の著作権であって、演奏家やレコード製作者の著作隣接権はまた別の団体が管理することになります。従って、その団体がJASRACと同じ方針でいくのか、どんな場合でも利用料の請求をするのかによって、また対応が変わってくるものと考えます。
ちなみに、オフィス等のBGMでも、受付とか応接室のように、従業員以外にも聞けるような場所で流す時は、JASRACでも利用料の免除対象には該当しないので、これについても注意が必要です。
以上、改正著作権法で何が変わったのかの解説でした。